至高の腕時計通、それを体現できる唯一無二のリストワッチ。
それがシャルルホーゲル。
出会いは10年以上前、東京山手線のつり革につかまっていたときだった。
カツカツカツッ!と、いかにも高級そうな靴音を響かせて、私のすぐ隣に、
乗り込んできた1人の男の左腕に光るクロノグラフ、それがシャルルホーゲルだった。
ソフト帽を脱ぎ、ニカッと微笑んだ、ビューティフルサンデー、
オーナーは立派なカイゼル髭を生やしたオールバックの老紳士だ。
「やあ!いい天気ですね。それはあなたのリストワッチ?ふうん、ローレックスの・・・
ああ!デイトナだね!コスモグラフ。うん、思い出した。はは、ダサいね!」
脳天を無反動ハンマーで思い切り殴られたような気分になった。
直後、これまでの全人生をぺしゃんこに踏み潰された、そんな感情が沸き起こった。
「それにそのいでたち。カーディガンを肩に巻いてセカンドバッグって。何のつもりなんだ?
バブル時代を引きずっているんではなかろうね?時計ならローレックス・・・リストワッチ
を1番 わかってない輩がそいういうことを言うんだ。本物を知る男が最後に行き着く
リストワッチ。
それがシャルルホーゲルなんだよ」
10年経ってようやくわかり始めた。昔の愚かな仲間とも縁を切った。
電車内で通りすがりのあっち側の人間から、
「すごい時計ですねえ。100万くらいするのかい?」
そう言われる度に、目をつむって伏せ目がちに
「はは・・・まあ、そんなところですかねぇ・・・」
などという、キザでバカな芝居もやめた。
行き着くところシャルルホーゲル。至高のリストワッチ・・・。
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